第27話 - 「エミリアの誘い」

重厚な門をくぐり、ツヨシとティナは、エミリアに導かれ要塞都市の中へと足を踏み入れた。
そこは、まるで未来都市のようだった。
金属製の建物が空高くそびえ立ち、街は、多数のアンドロイドが、人間に混じって歩いている。
ツヨシは、改めてこの世界のアンドロイド技術の高さに驚嘆した。
ティナは、少し不安げな表情で、周囲を見回していた。

エミリアは、ツヨシとティナを自宅へと案内した。
彼女の家は、高層マンションの高層階の一室だった。
部屋は広々としており、窓からは街の景色が 一望できた。

「どうぞ、ゆっくりしてくださいね」

エミリアは、二人にそう言うと、お茶を淹れてくれた。
ツヨシは、エミリアに尋ねた。

「…エミリア、この街には、人間はどれくらいいるんだ?」

エミリアは、少し寂しそうな表情で答えた。

「…ここには人間は、ほとんどいません。
人間に見えるのも、ほとんどがアンドロイドです」

ツヨシとティナは、エミリアの言葉に驚いた。

「どうして…?」

ティナが尋ねると、エミリアは静かに語り始めた。

「…この街は、アンドロイドを多数、生産するために造られた基地です。人間の記憶を引き継いでアンドロイドになった人も、多数います」

エミリアは、ゆっくりと呼吸を整えると、続けた。

「…そして私も実は…アンドロイドなんです…」

ツヨシとティナは、エミリアの告白に言葉を失った。
エミリアは、自らの正体をついに明かした。

「…そして、私は… 人間だった頃の記憶を持っています。だから… 人間のように感じ、考えることができます。でも…私は…アンドロイドなんです…」

ツヨシとティナは驚き、ただエミリアの話を聞いていた。

「昨日、部屋に泊まれなかったのも、私のアップデートの時期が来ていたからなんです。私のボディは新型で、出産以外の人間の機能をほぼ備えています。ただし、定期的にアップデートをする必要があります。そのアップデートは、装置がある場所でしかできません…」

エミリアは、ツヨシたちに人間だった頃の話を始めた。
彼女には、かつて恋人がいたが、アンドロイドにはならなかった。
そして、この戦争で命を落としてしまった。

「彼は、ツヨシさんにとても似ていました…」

エミリアは、ツヨシに向かって言った。

「…ツヨシさん、あなたも…アンドロイドになってください…。そうすれば…完璧な肉体と永遠の命を手に入れることができます。そして…私たちは永遠に一緒に生きることができるのです…。」

エミリアの瞳がわずかに潤み、彼女の声には隠しきれない寂しさが滲んでいた。
エミリアの言葉に、ツヨシは目を見開き、驚きを隠せなかった。
少し間を置いて、彼は静かに言った。

「エミリア、…それは完璧な肉体じゃない。結局は機械なんだよ。」

ティナが横から口を挟んだ。

「そんなのイヤ!」

ティナの声は震え、彼女の目には涙が浮かんでいた。

「ツヨシが機械になってしまうなんて…そんなの絶対にイヤ!ツヨシがもしアンドロイドになるなら…私もアンドロイドになります!」

エミリアはツヨシに対し、落ち着いた声で言った。

「ツヨシさん、あなたの気持ちは分かります。でも、人間の肉体には必ず寿命が来ます。一方でアンドロイドは、部品を交換すれば、ほぼ永遠に動き続けることができます。記憶だって、移すことができるんですよ」

ツヨシは、ティナとエミリアの両方を見つめながら、苦しそうに言葉を絞り出した。

「エミリア、俺にはティナがいる。ティナは…俺の大事な妻なんだ」

エミリアの表情が少し曇る。それでも、彼女は優しい微笑みを浮かべながら答えた。

「ツヨシさん、大丈夫です。私はアンドロイドなので死なないので…ティナさんがいなくなった後でも、私はいますから…」

ティナが怒りを隠しきれない表情で再び声を上げる。

「ツヨシがアンドロイドになるなら、私も絶対一緒になる!」

しかし、エミリアは冷静な声で彼女を制した。

「ティナさん、アンドロイドになるには莫大な資金が必要です。ツヨシさんの分は私が準備できますが、ティナさんの分までは…ごめんなさい」

その言葉に、ティナは悔しそうに口を閉ざす。一方で、ツヨシは深く息を吐き、エミリアに視線を戻した。

「いずれにせよ、俺はアンドロイドにはならないよ。俺は…人間として生きていきたい。たとえ寿命があったとしても…俺は機械にはなりたくない。」

エミリアはその言葉を聞いて一瞬表情を曇らせたが、やがて小さく頷いた。

「…ツヨシさんの意思を尊重します。でも…いつか考えが変わることがあれば、私はいつでも待っています」

ツヨシは毅然とした表情で答えた。

「ありがとう、エミリア。でも、俺の心は変わらない」

ティナは安堵の表情を浮かべ、ツヨシの隣に寄り添った。エミリアは二人を静かに見守りながら、胸の奥に何かを抱え込むようにそっと目を閉じた。

「明日、敵の基地に侵入します。ここからはそれほど離れていないので、おそらく明日の夕方には着くと思います。私は、敵の司令官に接触し、停戦交渉をします。そのときに異次元の扉も使わせてもらうように、話してみます」

ツヨシたちは、明日、敵の基地に侵入する決意を固めた。


(続く)

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