第26話 - 「要塞都市」
翌日、ツヨシとティナは、エミリアが残した手紙に添えられた地図を頼りに、指定された場所へと向かった。
地図に記されたその場所は、街はずれの廃墟と化した古びた教会だった。
かつて人々が祈りを捧げたであろうその教会は、今や屋根が崩れ落ち、壁はひび割れ、ステンドグラスは粉々に砕け散っていた。
風が吹き抜けるたびに、砂埃が舞い上がり、廃墟特有の寂しさと荒涼感が漂っている。
「ここ、本当にエミリアが指定した場所なの?」
ティナが地図を見つめながら、疑わしそうな顔をする。
「間違いないはずだよ」
ツヨシは注意深く周囲を見渡しながら言った。
二人が教会の中へ足を踏み入れると、奥の祭壇の前に一人の女性の姿が見えた。エミリアだった。
彼女は白いローブを身に纏い、静かに祭壇の前で祈りを捧げていた。
風に揺れる長い黒髪が、朽ち果てた教会の中でどこか神秘的な雰囲気を醸し出している。
ツヨシとティナはエミリアに気づかれないよう静かに近づいた。
「…エミリア…」
ツヨシが優しく声をかけると、エミリアは驚いたように振り向いた。
「…ツヨシさん、ティナさん…来てくださったのですね…」
エミリアの声には、どこか安堵と温かさが含まれていた。
「なぜ、こんな場所で待っていたんだ?」
ツヨシが疑問を口にすると、エミリアは少し微笑みながら答えた。
「…ここは、私にとって特別な場所なんです。そして、あなたたちと待ち合わせするには、この場所が最適だと思いました」
ティナは眉をひそめ、疑いの眼差しを向ける。
「それにしても、手紙を残して突然消えるなんて…どうしてそんなことを?」
エミリアは視線を落とし、少し悲しげな表情を浮かべた。
「…それは…私自身の事情があるからです。今はまだ話すことができません。でも、いつか必ず…真実をお話しします」
ツヨシはエミリアの瞳に宿る悲しみを感じ取り、それ以上追及することはなかった。
「わかったよ。とにかく、君を信じるしかない」
エミリアは小さく頷き、三人は教会を後にした。
街を出て歩き続けた三人の視界に、やがて巨大な壁で囲まれた要塞都市が現れた。
その壁は高さ10メートルを優に超え、所々に監視塔が設けられている。
塔の上では武装した兵士たちが見張りをしているのが見える。
「…あれが次の街よ」
エミリアが指さして説明する。
「この都市は、敵のドローンやアンドロイドから住民を守るために、完全に要塞化されているの。攻撃を防ぐだけでなく、外部からの侵入者も厳しく取り締まる仕組みになっているわ」
「すごいな…これなら安全そうだ」
ツヨシが感心したように呟くと、ティナが少し不安げに口を開いた。
「でも…なんだか閉じ込められそうな感じもするわ。あんなに厳重な壁があると、もし危険が起きたとき、私たち逃げられるのかしら?」
エミリアはティナの不安を和らげるように笑みを浮かべる。
「心配しないで。この街の中には、私たちと同じ目的を持つ仲間がたくさんいるの。今はまず、休息を取って計画を練り直すことが重要よ」
ツヨシとティナは頷き、要塞都市に向かって歩みを進めた。
近づくにつれ、壁の外側に並ぶ監視カメラや防御兵器が目に入り、都市の防衛力の高さを実感する。
「…すごい設備だな。これだけしっかりしているなら、敵の攻撃を受けても耐えられそうだ」
ツヨシがそう言うと、エミリアは真剣な顔で言葉を続けた。
「この要塞がある限り、私たちは守られる。でも、ここも完全に安全ではないわ。敵はこの街の中にも潜入しようとするはず…。だから、気を抜かないで」
その言葉に、ツヨシとティナは再び緊張を取り戻し、慎重に足を進めた。
(続く)