第19話 - 「窮地の吹雪」
光る円盤は、その鋭い切れ味で巨大な蜘蛛の体をたやすく貫いていった。
しかし、そのダメージは蜘蛛の動きを止めることはなかった。
円盤が切り裂いた部分が少しずつ広がりつつも、蜘蛛のゾンビはそれに構うことなく、なおもツヨシたちに近づいてきている。
「あ、あまりにも…大きすぎる!」
ツヨシは思わず声を上げ、巨大な蜘蛛が一歩ずつ迫るのを感じ取った。
その身の毛もよだつような不気味な迫力に、心臓が高鳴るのを感じる。
蜘蛛のゾンビの足音が、空気を震わせるように響く中、ツヨシは冷静さを保とうと必死だった。
その時、後ろでシロがふらふらとした様子で後退しているのに気付いた。
シロの足取りは重く、その場でほとんど動けなくなっている。
「シロ…!」
ティナが心配そうに声を上げるが、シロは返事もせず、ただうなだれたままで足元をふらつかせている。
その白い毛はかすかに震えており、普段ならばツヨシたちを守るために、全力で氷の力を使って巨大な蜘蛛を凍らせることができたかもしれない。
しかし、今のシロにはその力が残っていなかった。さきほどの戦闘で力を使い果たし、吹雪を放つどころか、その身すらも支えるのが精一杯なようだ。
「どうしよう…どうするんだ!」
カメラのフラッシュは、次に使えるまで時間がかかる。
蜘蛛の目は今はまだ、くらんでいるが、復活するのは時間の問題だった。
蜘蛛の糸が来た道をふさいでいて、戻ることはできない。
「もうダメだ、これ以上は…」
ツヨシは背筋に冷たい汗が流れ落ちるのを感じ、絶体絶命の状況に圧倒されそうになった。
しかし、そこでツヨシはふと気づいた。あきらめるわけにはいかない。ツヨシの中で、最後の闘志が燃え上がった。
その時だった。まるで天から降り注ぐように、とてつもない吹雪が突如として巻き起こった。
猛烈な冷気が周りを覆いつくし、温度が一気に下がっていった。
あたり一面が白く覆われ、息を呑むような寒さがツヨシの体を貫く。
そして次の瞬間、巨大な蜘蛛のゾンビの体は凍りついていた。さながら氷の彫刻のように、蜘蛛の全身が凍り固まる。
寒気が一気にその動きを封じ、ゾンビの不気味な足音がぴたりと止まっていたのだ。
ツヨシはその隙を逃さず、ショットガンを構え、引き金を引いた。
しかし、その巨体はあまりにも大きすぎ、距離もあったため、ショットガンの弾丸は蜘蛛に致命的なダメージを与えることはできなかった。
この巨体をしとめるには何かもっと強力な手段が必要なようだ。
「ツヨシ、グレネードランチャーよ!!」
ティナのその言葉がツヨシの耳に届いた瞬間、彼ははっとしてグレネードランチャーを取り出した。
以前、ツヨシが警察署の武器庫で手に入れた武器であり、当たれば威力は桁違いだ。
しかし、爆発の範囲を考えると、正確に当てる必要があった。
ツヨシは深呼吸をし、目を閉じて的を定める。そして、引き金を引いた。
「ドンッ!」
次の瞬間、グレネードランチャーの弾は、巨大な蜘蛛の口から入り、体の中で爆発した。
「グチャッ!」
爆発音が響き、蜘蛛のゾンビは一瞬で爆散し、その破片が四方八方に散らばった。
「き…気持ち悪い…」
ティナは、泣きそうになりながら、つぶやいた。
ツヨシとティナ、そしてシロはしばし、息を呑んでその場を見守った。
ツヨシたちに、ようやくつかの間の平穏が訪れたようにも感じた。
(続く)