第16話 - 「下水道の恐怖」

ツヨシたちは警察署の奥にある下水道への入口に向かった。
鉄製の扉を開けると、冷たい空気とともに湿った臭いが鼻をついた。その匂いは不安を呼び起こし、思わず息を呑む。

「これが…下水道か」

ツヨシはしっかりとハンマーを握り直し、ティナとシロに注意を促す。
二人も周囲を警戒しながら、階段を慎重に降りていく。
足元が不安定で、暗闇に包まれた道を進むにつれて、静寂を破るように「カサカサ…」という小さな音が背後から聞こえた。
ツヨシが振り返るが、そこには何もいない。

「気のせいじゃないわよね?」

ティナが小声で言う。ツヨシは首を振り、低く言った。

「とにかく、進もう」

下水道内はひどく暗く、湿った地面には水がたまり、時折小さな音が響く。
ツヨシがランタンを掲げ、暗闇を照らすと、壁にこびりついた苔や錆びついた配管が浮かび上がる。
シロは鼻を鳴らしながら先頭を進み、ツヨシたちもそれに続いた。
しかし、突然、前方から「カサカサ…」という音がした。

「止まれ!」

ツヨシが手を挙げ、動きを止める。ランタンの光がわずかに反射し、小さな動く影を映し出した。
それは腐敗したネズミのゾンビだった。

「気持ち悪い…!」

ティナはひどく怯えている。ツヨシは一歩前に出て、ハンマーを振りかざし、一匹のネズミゾンビを叩き潰した。
しかし、それでも周囲からカサカサという音が増え続けている。

「この音…まだ他にもいるのか…」

ツヨシは目を鋭くして周囲を見渡した。

音の源を追おうと進んでいくと、奥からより大きな「カサカサ…」という音が響いてきた。
その音はだんだん大きくなり、下水道の闇の中に巨大な影が浮かび上がった。

「なんだ、あれ…?」

ツヨシが息を呑み、ティナも目を見開き、その場で固まってしまう。
その巨大な影は、ゾンビ化した巨大なゴキブリだった。
その体は異様に膨れ上がり、鋭い脚が壁や地面を引き裂いている。
ゴキブリゾンビは前方にいるネズミゾンビに襲いかかり、貪るように食べ始めた。

「まさか…こんなものまでゾンビ化してるなんて…!しかも…大きい!」

ティナは怯えて震えている。

「気づかれるなよ…!」

ツヨシが小声で警告を発したが、次の瞬間、ゴキブリゾンビがツヨシたちの方へ視線を向けた。

「ぎゃああぁ!」

ティナが悲鳴を上げてしまう。
その音に反応し、ゴキブリゾンビはツヨシたちに向かって突進してきた。

「こ…来ないで!」

ティナはハンドガンを構え、連射する。しかし、弾丸は硬い外骨格に弾かれてしまう。

「効かない…!」

ティナが泣きそうな顔で焦る中、ツヨシがショットガンを取り出し、狙いを定めた。

「くらえっ!」

ツヨシが叫びながら引き金を引き、ショットガンの銃声が下水道内に轟いた。
ゴキブリの外骨格が少し削れたものの、ダメージがあるようには見えない。

「こいつ、硬いな…!」

ツヨシが歯を食いしばり、さらにショットガンを構えようとするが、ゴキブリゾンビは、カサカサ…とツヨシたちに迫ってくる。

ゴキブリゾンビが迫り、ティナとツヨシは一瞬の隙を探していた。

その時、シロが低く唸りながら鼻先から冷気を放つ。瞬く間に、ゴキブリゾンビの全体が凍り始め、動きが鈍くなっていく。
ツヨシはすぐにショットガンを構え、ゴキブリゾンビの腹部を狙う。

「今だ!」

弾が放たれると、巨大なゴキブリゾンビは「グチャッ」と、その場で爆散するように砕け散った。

「き、、気持ち悪い⋯」

ティナは泣きそうな顔でつぶやいた。

「やったか?」

ツヨシは冷たい汗をかきながら、周囲に目を凝らしたが、バラバラになったゴキブリゾンビはもう動かない。

ティナはほっとした表情を浮かべながらも、すぐに冷静さを取り戻した。

「油断は禁物ね。まだほかにもゾンビがいるかもしれないわ」

「油断するな…!」

ツヨシは息を整えながら、再び先を進む決意を固める。


(続く)

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