第14話 - 「警察署の生存者」

ツヨシたちが部屋に入ると、薄暗い空間の奥で警官が椅子に座り込んでいた。
顔は青白く、制服は血で汚れている。傷はかなり重症のようだ。

「大丈夫ですか?」

ティナが恐る恐る声をかけると、警官はかすれた声で呟いた。

「水を…頼む…」

ティナはバッグから水筒を取り出し、警官に差し出した。警官は震える手でそれを受け取り、少しずつ飲み始めた。
そして、ティナは、警官に回復魔法をかけた。

「ありがとう…」

彼は息を整え、ゆっくりと語り始めた。

「この街はゾンビウィルスに侵されている」

警官の声は弱々しかったが、その言葉には重みがあった。

「空気中に漂うウィルスだが、マスクを着ければ少量なら防げる。感染しても早期に治療すれば助かるんだ」

ティナが眉をひそめる。

「じゃあ、どうしてこんなことに?」

警官は顔をゆがめ、悔しそうに首を振った。

「住民たちはウィルスの危険性を甘く見た。マスクをつけるように何度も警告したが、誰も聞かなかった。それに、感染者が増えすぎて病院の治療能力を超えたんだ」

彼は深いため息をつき、暗い目で二人を見つめた。

「その結果、街の大半がゾンビに変わってしまった。外にいるのはほとんどが感染者だ。生存者は、もう私たちだけかもしれない…」

警官は震える手でポケットから2つの鍵を取り出した。

「これを持っていけ」

ツヨシは武器庫と備蓄庫の鍵を受け取り、感謝を込めて言った。

「助かります。お体を大事にしてください」

ティナも柔らかい笑みを浮かべた。

「ありがとうございます。何か見つけたら戻ってきますね」

警官は弱々しく微笑んだが、すぐに目を閉じて椅子に体を預けた。

「まずは武器庫に行こう。いつゾンビに襲われてもおかしくない。強力な武器が必要だ」

ツヨシは鍵を手に持ち、ティナとシロを連れて警察署の奥へ進み始めた。薄暗い廊下は血の跡が点々と続き、不気味な静けさが漂っている。

「気をつけて。何か出てくるかもしれないわ」

ティナが小声で呟いた。

「わかってる。シロ、気をつけろ」

ツヨシはシロの頭を軽く撫でながら、ハンマーを構え直した。
武器庫の扉にたどり着いたとき、背後で微かな物音がした。

「カサカサ…」

ツヨシたちは振り返るが、何も見えない。

「気のせいか?」

ツヨシが警戒しながら鍵を挿し、扉を開けると、中には整然とした武器が並んでいた。

棚には様々な武器が所狭しと置かれている。

「すごい…これだけあればゾンビとも対抗できるわ」ティナが呟いた。

ツヨシは武器を一つずつ確認しながら言った。

「ハンドガン、ショットガン、サブマシンガン、グレネードランチャー…。これならなんとかなるかもしれないな」

ティナは小型のハンドガンを手に取り、
「これなら私でも使えそう」
と言った。

シロは棚の隅で何かを嗅ぎながら、再び低く唸り声を上げた。ツヨシは言った。

「外で凍らせたゾンビが、もう動き出したかもしれない。外に出ると危険だ」

ティナは、ツヨシに提案した。

「地下を通れば、街の外に出られるかもしれない」

武器を確保した後、ツヨシたちは備蓄庫へ向かった。

「ここに水や食料があるはずだ」

鍵を使い扉を開けると、中には保存食や飲料水が整然と並んでいた。さらに、棚の端には未開封のマスクの箱が積まれていた。

「これで最低限の準備は整うわね」

ティナが手際よく荷物をまとめていく一方で、ツヨシは警戒しながら周囲を見回していた。備蓄庫の中は比較的安全そうだったが、不気味な静けさが漂っていた。
シロは備蓄庫の隅を嗅ぎながら低く唸った。

「どうした、シロ?」

ツヨシが尋ねると、シロはわずかに耳を動かしながら静かになった。

「とりあえず水と食料を持てるだけ持って行こう。それから地下の入り口を探すんだ」

そのとき、遠くからかすかに音が聞こえた。

「カサカサ…」


(続く)

< 前へ    次へ >    目次