第13話 - 「シロの覚醒」
ツヨシたちが街に足を踏み入れた後、霧の向こうから無数の影が次々と現れていた。
影は徐々に形を成し、腐敗した体と虚ろな目を持つゾンビたちが、次々と姿を現した。
「くそっ、こんなに多いのか!」
ツヨシはハンマーを握り直し、ティナとシロを背後に守る形で後ずさった。
ゾンビたちは足を引きずりながら、ゆっくりとだが確実に彼らに迫ってくる。
「ツヨシ、どうするの?こんなにゾンビがたくさん…!」
ティナの声には明らかな焦りが滲んでいた。
「逃げるしかない!けど、どこへ…?」
ツヨシが周囲を見渡すが、ゾンビたちは包囲網を形成しつつある。
その時、シロが低く唸り声を上げ、ツヨシの前に躍り出た。
「シロ、戻れ!お前に戦わせるわけには…!」
ツヨシが叫ぶが、シロは構わず前進する。
次の瞬間、シロが勢いよく息を吸い込み、鼻から白い息を吐き出した。
冷気は瞬く間にゾンビたちを包み込み、彼らの動きを一瞬で止めた。
「これ…氷の息?まさか…」
ティナが驚きの声を上げる。
目の前のゾンビは完全に凍り付いて、動きが止まっていた。
ツヨシはシロを見下ろしながら呟いた。
「シロは…犬じゃなくて、シロクマのモンスターの子供だったのか…」
シロは一瞬ツヨシの顔を見上げ、何かを感じ取ったようにすぐにまたゾンビたちを警戒し、低く唸り声を上げ始めた。
「でも、凍ったゾンビがまた動き出すかもしれない。早く安全な場所へ逃げないと!」
ティナがシロの頭を撫でながら言うと、ツヨシも深く頷いた。
ツヨシたちは街中を駆け抜け、建物の間を縫うように進んだ。
やがて、「POLICE」と書かれた看板が見える建物を発見する。
「警察署か…ここなら武器や備蓄があるかもしれない」
ツヨシはシロとティナを守るように先頭に立ち、警察署のドアを押し開けた。
中は静まり返っており、ゾンビの気配はない。だが、薄暗い照明の下で血の跡が床に伸びている。
「ここ、安全なの…?」
ティナが不安そうに呟く。ツヨシは慎重に周囲を見回しながら進んだ。
だが、その静けさが逆に不気味だった。
「気をつけろ。まだ油断はできない」
ツヨシが警戒を強める中、薄暗い廊下の奥で不気味な音が響いた。
ゾンビの唸り声だ。
「やっぱりここにも…!」
ツヨシがハンマーを構えた瞬間、廊下の影から2体のゾンビが現れた。
「ティナ、後ろに下がってろ!シロ、気をつけろ!」
ツヨシは1体目のゾンビにハンマーを振り下ろし、もう1体にはシロが低い唸り声を上げながら立ち向かった。
ティナは魔法陣を展開し、弱々しい光でゾンビの動きをわずかに鈍らせる。
「これで終わりだ!」
ツヨシが最後の一撃を振り下ろし、ゾンビの頭を粉砕した。静けさが戻る。
「ふう…。これで、なんとか全部倒したみたいだな」
ツヨシは荒い息を整えながら、地面にハンマーをついた。
「外よりはマシだけど…まだ安心できないわね」
ティナが慎重な目で周囲を見回した。
「うぅ…」
その時、奥の部屋から弱々しい声が聞こえた。
「誰かいるのか?」
ツヨシは警戒しつつ、声のする方へ一歩進んだ。
ティナはそっとツヨシの後ろに寄り添い、シロも警戒しながら低い唸り声を上げる。
「何かの罠じゃない…わよね?」
ティナが不安げに呟く。
ツヨシがドアに手をかけると、中からさらにかすれた声が漏れた。
「…を…くれ…」
薄暗い部屋の中、椅子に座り込んだ一人の男が彼らを見つめていた。
彼は制服を着た警官だったが、顔は青白く、疲れ切った様子だった。
「大丈夫ですか…?」
ティナが恐る恐る声をかける。
ツヨシはハンマーをしっかりと構えたまま、警戒しつつ、警官に近づいていった。
「感染していないのか…?」
警官は弱々しく首を振った。「話はあとだ…水、水をくれ…」
(続く)