第8話 - 「盗賊のボス」
あたりは随分と薄暗くなってきたが、ツヨシとティナは盗賊のボスの館の前に到着した。
警備の盗賊がいるかと思っていたが、その館の周りには誰の姿も見当たらない。
「何かおかしいわね。普通、こんな大きな屋敷には警備が何人もいるはずなのに…」
ティナが不安げに言った。
その瞬間、後ろから声がした。
「おい、お前ら、何の用だ?」
振り向くと、暗がりの中に1人の盗賊らしき男が立っていた。肩には大きな槍を担ぎ、威圧的な態度でこちらを見ている。
「お前が盗賊のボスか?」
ツヨシが冷静に尋ねた。
「そうだが、何か用か?」
男はにやりと笑いながら答えた。
ツヨシは一歩踏み出して言った。
「魔法の鏡を探している。持っているか?」
盗賊のボスは、にやりと口元を歪ませ、懐から鏡を取り出して見せつけた。
「これのことだろ?」
盗賊のボスは自信満々に鏡を掲げた。
「それを譲ってくれないか?」
ツヨシは慎重に言葉を選んだ。
「なぜだ?」
盗賊のボスは問い返し、目を細めてツヨシを見つめた。
ツヨシは迷うことなく答えた。
「異次元の扉を開けるために必要なんだ」
盗賊のボスは、しばらく沈黙した後、恐ろしい笑みを浮かべて言った。
「異次元の扉だと…?」
盗賊のボスは不気味に笑いながら、その体は急激に大きくなっていった。
服が引き裂け、肉体が大きく変化し、骨が音を立てて変形していく。
目の前に現れたのは、人間の姿を完全に超越した、巨大な魔物だった。
「魔法の鏡を狙う者は、皆殺しだ!!」
その言葉と共に、魔物はツヨシとティナに向けて襲いかかろうとした。
魔物の目が赤く光り、周囲の空気が一変する。
ツヨシは、カメラを構えた。
ティナが、叫んだ。
「サン フラッシュよ!」
その瞬間、ツヨシはカメラのシャッターを押し、強烈なフラッシュが辺りを一瞬で照らし出した。
魔物は、突如として目を押さえて、うめき声を上げながらその場でのたうちまわっていた。
その間に、ツヨシは一気に距離を詰め、高級ハンマーを握りしめた。
「くらえ!」
ツヨシは叫びながら、ハンマーで魔物の頭をめったうちにした。
だが、魔物は相変わらず目を押さえたままで、のたうち回り続けている。
ハンマーは、魔物の頭に何度もヒットしているが、ダメージを与えているようには見えない。
「駄目だ、魔物にはこの攻撃は通じない!」
ツヨシは、攻撃が無駄であると感じ始め、息を荒げながらつぶやいた。
ティナが焦りながら言った。
「もう時間がないわ!ツヨシ、いったん逃げましょう!」
その時、ツヨシが後ろに数歩下がりながら振り返った。その瞬間、ティナが叫んだ。
「ツヨシ、腰のあたりで何か光っている!!」
ツヨシは瞬時に自分の腰を確認すると、ズボンのポケットの中から、青白く光る物体が見えた。
それは、あの異世界に転生した際に光った、あのヨーヨーだった。
「ヨーヨー…!すっかり忘れていた。異世界に転生したとき、確かこのヨーヨーは光っていたんだ。特別な何かがあるに違いない。」
ツヨシは、手にしたヨーヨーを魔物に向けて投げつけた。
ヨーヨーは空中で回転しながら、突如として光る大きな円盤のようなものを発射した。
光の円盤は、目にも止まらぬ速さで、魔物の頭部から体の中心を真っ二つに切り裂いていった。
その光る円盤はそのまま、その先にある館の庭に飾られた巨大な岩さえも、難なく真っ二つに切り裂いた後、はるか遠くに消え去ってしまった。
その光景に、ティナは目を見開いて立ちすくんだ。数秒の静寂の後、彼女はようやく言葉を発した。
「これって…どういうこと…?」
ティナは呆然としながらも、信じられない光景に圧倒されていた。
ツヨシはその場に立ち尽くしたまま、驚きと興奮が入り混じった声で言った。
「これは…チート武器じゃないか!!」
息を呑む二人の前で、倒れた魔物の身体がゆっくりと地面に沈み、その場に静けさが戻った。
(続く)