第10話 決戦。そして・・・。

進三郎とメグは息を切らしながら首相官邸を目指していた。
そのとき、爆発音が響いた。二人が振り向くと、遠くの空が不気味に光り、銃撃音が聞こえてきた。

「なんだ、あの音……?」
進三郎が顔を上げたとき、遠くの空にチカチカと点滅する光が見えた。何かが空中で激しく動いているようだ。

「進三郎、見て!」
メグが指差した先には、不自然な閃光が絶え間なく輝いていた。

「まさか……メルが?」
進三郎とメグは、胸の奥に嫌な予感を抱えながらその方向へと走り出した。


現場に近づくと、耳をつんざくようなプロペラ音や銃撃音が響いてきた。そして、空中には無数のドローンが舞い、閃光が交錯している。進三郎とメグは身を隠しながらその光景を見つめた。

「何だこれ……ドローンが戦ってるのか?」
進三郎は信じられない思いでつぶやいた。空中では多数のドローンが互いにぶつかり合い、破片を撒き散らしながら地上に墜落していく。
近くにはたくさんの警察官や機動隊員が展開し、ドローンを撃ち落とそうとしている様子が見えた。その光景に、メグが声を上げる。
「機動隊……警察?これ、ただ事じゃない!」

さらに目を凝らすと、警察側もドローンを使い、敵ドローンに対抗していることが分かった。

「警察もドローン部隊を持ってたなんて……。」
進三郎が呆然とつぶやく中、警察のドローンが敵ドローンに突撃し、激しく衝突して爆発した。そして、地面に落ちていく。

激しい戦闘の中、空中で一際目立つ人型の存在があった。それはメルのように見えたが、戦闘の最中、警察の銃撃を受けて地上に墜落した。

「メル!」

進三郎は叫びながら、その人型の方へ駆け寄った。
地上に横たわるそれに近づくと、確かにメルに似ている。だが、よく見ると髪の色が違う。ピンクではなく、青みがかった色だった。

「……違う、メルじゃない。」

「進三郎……」
そのとき、背後から聞き覚えのある声がした。驚いて振り返ると、そこには本物のメルが立っていた。彼女の青い瞳は揺れており、どこか哀しげだった。

「メル……!」
進三郎は駆け寄ろうとしたが、メルは手をかざしてそれを制止した。

「私……できない。」
メルは静かに言葉を紡いだ。
「私はK国の工作員。進三郎に近づいたのも、全てこの国を攻撃するため。でも、無理なの。だって……進三郎が生まれ育った国だもの。こんなこと、私にはできない……私は失格よ。」

メルの目に涙が浮かび、彼女はその場に立ち尽くした。

「これで終わりにするわ……。」

次の瞬間、メルはリモコンを握りしめ、スイッチを押そうとした。

「メル、何をする気だ?やめろ!」
進三郎は気づいて叫んだ。

「これでいいのよ。私はもう必要ない……。」
メルはリモコンを静かに自らの胸元に手を当て、今にもスイッチを押そうとした。

「メル!」
進三郎は全力で駆け寄り、その手を振り払った。リモコンが地面に落ち、メルは驚いた表情で進三郎を見つめた。

「お前は決して失格なんかじゃない。俺たちの日常を支えてくれた。それが……お前の存在の意味だろ!」
進三郎は声を震わせながら叫んだ。
メルの目に再び涙があふれた。
「でも……私は……」
「違う!お前は俺たちの生活に必要な存在だ!だから、勝手にいなくなるな!」

メルの瞳から、一筋の涙がこぼれた。やがて、彼女は小さく頷き、進三郎の手を取った。

「進三郎……私、どうすればいいの?」
メルは進三郎を見つめ、弱々しく呟いた。

「俺たちと一緒に考えよう。やり直せばいいんだ。お前がK国の工作員だなんて関係ない。今のメルは……俺たちのメルなんだよ。」

進三郎の言葉に、メルはしばらく沈黙していたが、やがて小さく頷いた。彼女の目から一筋の涙がこぼれ落ちた。

「分かった……でも、どうすればいいか分からない。」

「大丈夫だよ。お前を絶対に守る。」

進三郎はそう言い切ると、そっとメルの肩に手を置いた。

「……ありがとう、進三郎。」

進三郎はメルの肩を抱きながら、優しく笑みを浮かべた。そして、メグの方を振り返りながら言った。

「帰ろう。俺たちの家へ……!」

メルも小さく頷き、初めて見せるような柔らかな笑顔を浮かべた。

夜明けの光が彼らを包み込み、三人は静かに歩き出した。


<完>

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